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EPUB-WEB ― 本とウェブとの境目をゼロにするビジョン

EPUB-WEBは今後の電子出版の方向性を示す重要な取り組みになるかもしれない。

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先日のエントリを書いた際に、少しだけ触れたEPUB-WEBについて、もう少し詳しく述べておくことにする。

Digital Publishing Interest Group(DPUB IG)

EPUB-WEBは昨年、Digital Publishing Interest Groupの活動の中で提唱されたビジョンだ。

EPUB-WEB

EPUB-WEBの概要を以下に述べる。

EPUB-WEBが取り組む領域

上述のホワイトペーパーではEPUB-WEBでは次のことに取り組むとしている。

ポータブル/オフライン文書の汎用的なアーカイブフォーマット

  • Zipコンテナの限界。
  • ストリーム可能なパッケージフォーマットPackaging on the Webを視野に入れている。

出版物の全体構造の取得

  • EPUBの目次やガイド、spineなどは大規模で複雑な出版物では重要だがシングルページの文書にとっては過剰。
  • EPUB-WEBではデフォルト値を定義することで、これらの情報オブジェクトを省略可能にするべき。

文書とフラグメント識別子

  • ポータブル文書のフォーマットにはHTTPアドレスがない。
  • 学術領域ではDOIやCROSSREFがURNリゾルバサービスを提供しているが、商業分野はそうなっていない。有償かつ登録手続きが必要なのも多様なユースケースにそぐわない。
  • フラグメント識別子EPUB-CFIは出版物内部の参照ができるが、オンラインとオフライン/ポータブルの状態の変化を扱えない。
  • EPUB-WEBは文書とフラグメントを識別できるURIスキームを定義するべき。

メタデータ、発見

  • EPUB-WEBはオンライン/オフラインに左右されない基本的なインラインのメタデータレコードの構文を定義しなければならない。
  • EPUB-WEBでは最小限の必須メタデータ語彙を定義するが、それ以上の語彙は各ドメインに委ねる。

スタイリング、レイアウト、ページ表現

  • Webのタイポグラフィやレイアウトは出版社の要求に応えられていないが、それぞれの問題はCSS WGの中で時間をかけて解決されてゆくだろう。
  • ページ表現のネイティブなサポートもEPUB-WEBの重要なコンポーネントになるだろう。

セキュリティとプライバシーのモデル

  • ウェブのセキュリティモデルのベースとなっている同一オリジンポリシーや「サイト」の概念がポータブル文書には適用されない。
  • EPUB-WEBはオンライン/オフラインに左右されないセキュリティとプライバシーモデルに取り組まなければならない。

プレゼンテーションの制御とパーソナライゼーション

  • EPUB-WEBはユーザーを起点としたプレゼンテーション制御の明確なフレームワークに取り組む必要がある。

ドメイン固有の制限や拡張のモデル

  • EPUB-WEBはコンテンツの制作と検証の対象となる「プロファイル」という概念に取り組む必要がある。
  • EPUB-WEBのプロファイルは「フィーチャーアドオン」という概念を導入して、元の出版物にリスクを与えずに拡張機能を使えるようにする必要がある。

おわりに

EPUB-WEBの取り組みには、電子出版に関わる人の多くが感じてきたさまざまな課題を凝縮されていると感じた。少なくとも僕は、ずっと解決を望んできた課題だ。それをWeb標準に沿った形で解決できるのならば、極めて理想的だと思える。特定の業界の標準化団体が進めるよりも遥かに筋がいい。日本語の情報はほとんどないが、今後も調べたことを随時メモしてゆきたい。