ろす 今日はちょっと雑談です。
このブログの読者だったり僕のツイッターをフォローしてくれている方は気づいているのかな。僕はもう長い間、電子書籍の略語として「電書」って言葉を使っていません。
電書ちゃん は? そんなわけないでしょ。現に今もあたしのセリフのト書きに「電書ちゃん」て書いてあるじゃない。
ろす それは固有名詞だよね。「電書ちゃん」と「電書ちゃんねる」以外で僕は電書って言葉を使ってないのよ。多分2011年頃から。今日はちょっとそんな経緯を話題にしたいと思います。
知ってる人も多いと思うけど、最初に「電書」という言葉を提唱したのは「ぷよぷよ」の生みの親である米光一成さんです。この言葉の初出は多分、2010年5月の文学フリマで販売された米光さんとマンガ家ユニット「うめ」の小沢高広さんの対談本「電子書籍宣言」というEPUB本です。手元にあるので引用してみましょう。
米光 「電子書籍」って呼ぶからイメージが貧困になるんだよ。「書籍」じゃない! 「携帯電話」って「ケータイ」って言うでしょ。もう電話のイメージから飛び出した。それと同じように「電書」って呼ぶことにしようかと。
小沢 デンショ?
米光 書籍の「籍」って字がさ重いから。
この時点の定義では「携帯電話」=「ケータイ」であるように「電子書籍」=「電書」という関係がまだ成立していたと思います。
で、この「電書」って言葉は Twitterで電子書籍について語っていた僕を含む議論好きたちの間でも使われてゆくんだよね。140字で話をする際にいちいち「電子書籍」って入力するのはダルい。「電書」の方が文字数を節約できる。僕自身「電子書籍」の「書籍」って部分が好きじゃなかった。例えば「書籍」って言っちゃうと、もうマンガや雑誌は意識から除外されちゃうところがあるからさ。
そんな状況の中、僕は自分のブログに登場することになった精霊だか妖精だかマスコットだかよくわからない女の子を「電書ちゃん」と呼んでみたりした。
電書ちゃん キャラ設定が固まってない頃のことにはあんまり触れて欲しくないんだけど。
ろす ぶっちゃけ今も固まってないんだけどね。まあ、そんなことがありました。
ところで「電書」はやがて新たなニュアンスを加えてゆきます。
「電子書籍」だと、ついつい紙の本をベースに想像してしまう。「紙の本がなくなっちゃうんですか」「紙の本のほうが暖かみがあっていい」というような話になってしまいがち。そうなっちゃうと、電書の可能性にほとんど気づかずに、ほんの一部分だけを見てしまうことになる。紙の本のしっかりしたフォーマットにとらわれる必要はない。
[ 【特集 本格化する電子出版】 「電書」をやってわかったこと。紙の本とは違う楽しさがここにある-米光一成(スタジオジブリ) - BLOGOS(ブロゴス)
(中略)
電書は、電子書籍の略称ではない。新しい表現の器になる。電書は、略称じゃなくて、電書。]
あるいは、
米光さんがあえて「電書」と呼ばれているものと、従来の「電子書籍」の違いを教えてください。
[ 日本編集制作協会 AJEC]
僕が「電書」と言っているものは、書籍を単に電子化したものではなく、違うメディアです。ページ数も1ページでもいいし5千ページでもいい。ページという概念がなくてもいい。いつ出してもいいし、いつでも書き換えられる。書籍ではないんですね。
ここではもはや「電子書籍」=「電書」ではないですね。
紙の本の電子化とは異なる手軽で自由な本のかたちを指向しています。米光さんの活動から生まれるコンテンツを象徴するキーワードです。引用したのはわりと最近の記事だけど、もっと早い時期に同様の趣旨が語られているのを見た記憶があります(今回発掘できませんでした)。
でも、こういう定義になると僕が扱ってきたテーマとは異なってきてしまうんですよ。
僕は紙の本の電子化だろうがボーンデジタルだろうがアプリだろうが電子出版物全般を広く考えていきたいんです。でもやっぱり考案者の定義は尊重したい。そこで以後ずっと僕は「電書」って言葉を「電子書籍」の略語として使わないように気を付けてきました。
ところが、どうしようもないのが固有名詞で「電書ちゃん」のどこが気に入ったのか物好きなファンが少数ながらついてしまい、今更引くに引けないんですね。
電書ちゃん ちょっと、物好きとかあたしにもファンの人にも失礼じゃない。
ろす 電書ちゃんのファンは基本的にドMだからいいんだよ。
というわけで「電書ちゃんねる」は、いつも「電書」の誤用に加担している後ろめたさを感じながら営業してます。
電書ちゃん このブログ見て「電子書籍」の略語として「電書」って言葉使いはじめた人もいるかもしれないのに、あんたがハシゴ外すのも随分な話よね。
ろす 僕もどうするのがいいのかわかんない。
米光さんから「お前ら紛らわしいんだよ、ゴルァ」と怒られない限りは現状維持でいきます。ただこうした経緯や現在の「電書」の定義については一度しっかり説明しておく義務があるよね、と今更ながらエントリを書いてみました。
昨年の電書カプセルNightの時は米光さんから直々に電書ちゃん宛に招待状を頂いたので、黙認して貰ってると思っていいのかな(チラッ
電書ちゃんの代理で僕が出席してきましたが、とても嬉しかったです。記念に招待者名簿の写真撮っちゃった。
電書ちゃん でも、もし改名が必要になったならあたしはどんな名前になるのよ。
ろす 電子出版物を略して「電出ちゃん」だね。
電書ちゃん 絶対嫌! 語呂も字面も最悪。そもそもなんて読むのよ。デンデちゃん? あたしナメック星人?
ろす タカラットポッポルンガプピリットパロ(出よポルンガ、そして願いをかなえたまえ) !
電書ちゃん 願いはもちろん、素敵な名前を授かること!
※追記
コメント欄にて米光さんより素敵なメッセージを頂いたので、現状維持でいきます。
もう「電書」が電子書籍の略称として使われようが、どう使われようが、ぜんぜんOKです。
漢字を2文字省略しただけなので、もう別に、ふつーに、勝手に、自由に、出鱈目に、使われるといいなーと祈ります。
助かったな電書ちゃん!